解約率(チャーンレート)
解約率(チャーンレート)とは、一定期間——通常は月次または年次——に失った顧客の割合、あるいは経常収益の割合を指します。バケツに空いた穴のようなもので、月次の顧客解約率が5%なら、12か月後にコホートに残っているのはおよそ54%にすぎません。つまり解約率は、新規登録が成長として積み上がるのか、それとも出ていった分を埋め合わせるだけで終わるのかを決めます。
解約率の計算方法
基本の式は、期間中に失った顧客数を期首の顧客数で割り、百分率で表すだけです。ある月に200人のうち6人を失えば、月次解約率は3%になります。算数そのものは単純で、創業者が「思っていた意味とは違う数字」を手にしてしまうのは、その下にある定義のほうです。
答えを変える判断が四つあります。これらを揃えないかぎり、ベンチマークとの比較も、競合との比較も、自社の過去との比較も意味を持ちません。
- 誰を顧客と数えるか。 無料ユーザー、トライアルアカウント、有料契約者では解約の理由がまったく違います。混ぜて出した一つの数字は、結局誰のことも説明しません。
- どの期間を取るか。 月次と年次の解約率は互換ではなく、月次を単純に12倍することもできません。複利的に母数が毎月縮むため、素朴な掛け算は損失を過大に見せます。
- 期中に増えた顧客をどう扱うか。 慣行は、期中に獲得した顧客を分母から除くことです。そうすることで実際に期首にいたコホートを測れます。含めてしまうと、急成長が低い解約率のように見えてしまいます。
- 何を「失った」と数えるか。 意図的な解約と決済の失敗はどちらも離脱ですが、プロダクトへの評決といえるのは前者だけです。期限切れの支払い方法による非自発的な解約は、たいてい最も安く直せる解約です。
顧客解約率、収益解約率、そしてネット・レベニュー・リテンション
「どれだけ失ったのか」という問いには二つの問いが隠れており、成熟したチームは両方を追います。互いに逆を向くことがあるからです。
- 顧客解約率(ロゴチャーン)は、支払額に関係なく離脱の件数を数えます。人々がこのプロダクトを選び続けているかに答えます。
- グロス収益解約率は、出ていった経常収益を数えます。大口が1社抜けるだけで小口20社より重くなり得ます。その損失が実際にいくらだったのかに答えます。
- ネット・レベニュー・リテンションは、アップグレード・シート追加・利用増といった拡張分を、それらの損失と相殺します。100%を超えるとは、残った顧客の成長が離脱分を上回って余りあるということで、これが世に言うネガティブチャーンです。
だからこそ、月に3%の顧客を失いながら収益は伸びる会社が存在し、健全に見える顧客数の裏で「大事だったアカウント」の喪失が隠れることもあります。単一プランの単一価格なら二つの指標は連動しますが、階層・シート・従量課金が入った瞬間に乖離し、両方が必要になります。収益側の見方は顧客生涯価値を計算可能にするものでもあります。ライフタイムとは、自分が本当に信じている解約率の逆数にほかならないからです。
「良い数字」とは何か——そして創業者を惑わせる数字
引用に値する普遍的なベンチマークはありません。許容できる解約率は、誰に売るか、いくら取るか、そのプロダクトが毎日使われるのか四半期に二度なのかで変わりますし、ネット上に出回るレンジはそのどれを測ったのかをほとんど書いていません。意味のある比較は、自社の推移を自社の経済性に照らすことです。顧客が離脱するまでに生む収益が獲得コストを十分に上回っているなら、その解約率は許容範囲——つまりこの数字は他人のブログの表ではなく顧客獲得コストに結びついています。
意見の分かれようがないのは複利の効き方です。月次解約率5%ならコホートは一年後におよそ54%が残り、2%なら約78%、1%なら約89%です。この三本の線の差が、永遠にバケツへ水を足し続けるのか、積み上がるものを作るのかの差であり、解約率が月に数%を超えた時点でリテンション施策が新しい獲得チャネルに勝ちやすくなる理由でもあります。実務的な突破口は上流にあります。解約の多くは最初の数日、ユーザーが最初の本当の成果に到達できなかった時点で決まっており、だからこそアクティベーション率が、数か月後にしか表面化しない数字に対する最も早い打ち手になります。具体的な戦術はSaaS の解約を減らす方法にまとめてあります。
AgentCeres——agentceres.com の AI Growth Officer——を作る中での一次情報として。当社はカード登録不要の14日間トライアルを提供しており、15日目に失効するアカウントは一度も顧客になっていません。これを解約として数えれば数字は膨らみ、さらに悪いことに、どちらの問題を抱えているのかが曖昧になります。転換しないトライアルはトライアルから有料への転換の問題で、解決策は最初の有用な成果までを速くすること。三か月目に去る顧客はまったく別の原因を持つリテンションの問題です。この二つの帳簿を分けておくという地味な作業が、次にどちらの修正を作るのかを決めます。
FAQ
- 月次の解約率はどう計算する?
- その月に離脱した顧客数を、月初の顧客数で割り、100を掛けます。月初に400人いて12人が解約したなら、月次解約率は3%です。その月に獲得した顧客は分母から除いてください。含めると成長が損失を覆い隠します。顧客数ではなく経常収益で同じ計算をすれば収益解約率になり、価格が二つ以上あるならそちらのほうが有用な数字です。
- SaaS の解約率はどのくらいなら良い?
- セグメントと価格帯で大きく変わるため、単一の数字を挙げること自体が誤解を招きます。中小企業向けのセルフサーブ製品は、大企業との年間契約よりはるかに速く顧客を失いますし、よく出回るレンジはどちらを測ったのかを書いていないことがほとんどです。誠実な判断基準は、その解約率のもとで顧客が獲得コストを上回る価値を残しているか、そして率が時間とともに下がっているかです。他社と比べる前に、まず自社の直近半年と比べてください。
- 解約率と継続率の違いは?
- 同じ期間を裏表から見たものです。継続率は残った割合、解約率は去った割合で、同一コホートなら合計は100%になります。コホート分析では継続率のほうが扱いやすく、長期でも自然に読め、カーブが寝てくる瞬間が見えます。一方、予測には解約率のほうが便利です。顧客生涯価値や収益見通しの計算にそのまま入るからです。
- ネガティブチャーンとは?
- ネット・レベニュー・リテンションが100%を超える状態を指します。残った顧客からの拡張収益——アップグレード、シート追加、利用量の増加——が、解約とダウングレードで失った収益をすべて上回っている状態です。この位置にいる企業は、新規顧客がゼロの月でも経常収益が伸びます。解約を減らすだけで到達できるものではなく、顧客が得る価値に応じて伸びる価格設計の性質です。
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